今回は『にごりえ/樋口一葉』のあらすじと要約です。
「樋口一葉」と聞くと「たけくらべ」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、今回紹介する「にごりえ」もまた樋口一葉の有名作です。
特に「にごりえ」は傑作短編であると同時に、読者によって感想が正反対というおもしろい特性をもっています。
個人的には「にごりえ」の方がずっと好きなので、まずはこちらから紹介させていただきます。
樋口一葉は24歳という若さで亡くなくなり、作家人生はたったの4年程度でしたが、
彼女は女性が封建社会に縛られることに対する悲しみを取り上げ、独特で新鮮な作風の持ち主でした。
特に1900年前後には樋口一葉のように簡明な文体でリアルな描写をする女性が少なかったため、
作品の構成力の高さとともに彼女の作風にも注目されました。
今回は『にごりえ/樋口一葉のあらすじ・簡単な要約・解説』として、
人間らしく生きようと努力する主人公の悲惨な運命をお楽しみください。
※ お時間のない方向けに ”最初に「あらすじ・要約のまとめ」を載せている” ので、そちらだけでもお読みください<(_ _)>
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にごりえ/樋口一葉【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】
「にごりえ/樋口一葉ーあらすじ・簡単な要約・読書感想文用・解説」まとめ
・ お力は一枚看板の酌婦として働いていた
・ かつてお力と源七は恋仲だったが、源七が破産し2人は別れた
・ お力は新たな上客である結城と出会う
・ 結城はお力に興味があり、またお力も結城を気に入っているように見える
・ お力はこれまで隠していた自分の過去を結城に打ち明ける
・ 源七はまだお力のことが忘れられず、ついには妻と別れる
・ そして盆を過ぎたある日、2つの棺が町を行く
・ 遺体は源七に刺されたお力のものと、自ら切腹した源七のものであった
・ 無理心中なのか、合意の上だったのか、その答えは誰にもわからない
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『にごりえ/樋口一葉』の簡単・分かりやすい要約
『にごりえ/樋口一葉』の主な登場人物は3人です。
1、主人公であり娼婦の「お力(りき)」
2、お力のかつての上客「源七(げんしち)」
3、お力の今の上客「結城(ゆうき)」
ここからは『にごりえ/樋口一葉の簡単・分かりやすい要約』として概要だけ説明していきます。
「お力」は娼婦でありながら、美人で若く、お客をとるのもうまかったためお店の一枚看板でした。
付き合ってみれば案外やさしいこともわかるため、同性から見ても気持ちのいいものでした。
お力にはかつて源七という上等な客がいましたが、源七はお力に貢ぎすぎるあまりに破産してしまい、
今では落ちぶれて妻子と町はずれで暮らしているそうでした。
お力に関しても仲間から源七のことを聞かれると「もう忘れた」とうそぶいていました。
そんな時、お力は「結城」という新たな上客と出会いました。
結城はお力に興味をもったらしく、その後も頻繁にお力を訪ねていくようになりました。
お力も結城を気に入ったそぶりを見せ、しばらく顔をみせないと手紙を出したりしました。
ある日、今度はかつての客だった源七がお力を訪ねてきました。
源七は未だにお力のことが忘れられずにいましたが、お力は頑なに源七と会おうとはしませんでした。
そしてお力は、今は結城の夢ばかり見る…と自嘲しました。
源七はお力と結城の中が深まっているのを知り、妻と離婚しました。
そして、お盆を過ぎて何日かたったある日、町を出ていく2つの棺(ひつぎ)がありました。
その棺には源七に刺されたお力の遺体と、自ら切腹した源七の遺体が入っていました。
ある者は「無理心中だ」といい、またある者は「お力は合意の上だった」といいました。
以上が簡単な『にごりえ/樋口一葉』の要約です。
もう少し章をわけて説明した方がわかりやすいと思うので、以下に『にごりえ/樋口一葉のあらすじ』も載せておきます。
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『にごりえ/樋口一葉』のあらすじ・解説
「にごりえ/樋口一葉のあらすじ1」ー お力のかつての上客・源七
主人公の「お力」は銘酒屋「菊の井」で酌婦(しゃくふ:今の娼婦や売春婦に近い)として働いていました。
お力は美人で若く、客をとる腕がよかったため菊の井の一枚看板となっていました。
お力は仲間の酌婦たちから悪口を言われることもありましたが、実際に付き合ってみると案外やさしく、
同性からも好意をもたれていました。
お力にはかつて蒲団(ふとん)業を営んでいた「源七」という馴染み客がいました。
しかし源七はお力に入れ込みすぎて財産を使い果たし、お力と別れてからはすっかり落ちぶれてしまいました。
今は土木工事の手伝いをして妻子を養っているそうです。
お力にしても、仲間が源七の話をすると「もう忘れた」などとうそぶき、
道行く男に声を掛けてはお客を探し回っていました。
「にごりえ/樋口一葉のあらすじ2」ー お力の今の上客・結城
ある日、お力は「結城朝之助」という上等な客と出会います。
結城は会ったその日からお力に興味を示し、彼女のことをあれこれ聞き出そうとします。
しかし、お力ははぐらかすばかりで自分のことは一切語りませんでした。
しばらくすると、結城は週に何度もお力を求めて菊の井に通うようになりました。
お力の方も結城を気に入っているらしく、少し足が途絶えれば手紙を出したりもしました。
酌婦仲間たちは「いい男をつかまえた」とお力をはやし立てました。
「にごりえ/樋口一葉のあらすじ3」ー 源七の再来とお力の闇
ある日、かつて別れたはずの源七がお力を訪ねてやってきました。
源七は未だにお力のことが忘れられず座敷までやってきたのでした。
しかし、お力は源七に会おうとはせず、結城のことばかりが気になっていると自嘲します。
実はお力もまた寂しく心に闇を抱えた人間でした。
ある時、お力はお盆でにぎわう座敷の中で、突然町へ飛び出し自暴自棄になってしまいます。
顔には白粉(おしろい)を塗りたくり、町ゆく人々からは白鬼だと呼ばれます。
こんな人生が果たして本当に自分の一生なのだろうかーとお力は発狂しそうになりながら町を放浪します。
そんな時、さまようお力を見つけ呼び止めたのは結城でした。
お力は結城にこれまでの隠していた自分の過去を明かします。
お力の家は貧しく、父も祖父も変わり者だといわれ死んでいきました。
そして自分も7つの頃から狂ったような感覚があり、
自分の家系はおかしいのだから仕方がない…と寂しくお力は笑いました。
結城はお力を励ましますが、お力はうちしおれるままでした。
「にごりえ/樋口一葉のあらすじ4」ー お力の心の向く先は
その頃、源七はお力への恋慕が原因でもめていました。
源七の妻は「離縁だけはお許しを」と源七に泣きつきますが、源七は聞き入れず、
ついに妻は子供を連れて家を出て行ってしまいました。
お盆を過ぎて何日かたったある日、町を出ていく2つの棺がありました。
お力のために仕事も家族も失った源七はお力を刺殺し、自分は切腹したのでした。
ある者は「つまらぬやつに見込まれたお力はかわいそうだ」といい、
またある者は「お力が合意の上で死を選んだのだ」といいました。
以上が『にごりえ/樋口一葉』のあらすじと要約です。
ラストではお力と源七が死体となって発見されますが、それが源七の殺し(無理心中)だったのか、
それともお力も源七と同じ気持ちで死ぬことに同意していたのかは文中からは読み取れないように書かれています。
特にお力の源七に対する心情は文中にはほとんど出てこないため、
結城と源七の人間性やお力の性格から判断するほかないでしょう。
これが「にごりえ」が難解作といわれる理由であり、また読み応えのある理由でもあります。
今回の「にごりえ」のあらすじでは、だいぶ会話を割愛しているので誤解が生じる箇所が多々あるかもしれません。
例えばお力が自暴自棄になって結城と出会った夜などは、
お力は結城に「身を固めたいと思うのですが、できないのです。」と述べていますし、
また結城を帰さず自分の家に泊めています。
ここだけ切り取れば結城に気があり、源七のことなど忘れているようにも思えますが、
端々に出てくる源七を連想させる表現もあったりします。
ひょっとしたら樋口一葉自身も明確な解を持って執筆していたわけではないのかもしれません。
ぜひ皆さんも一度は「にごりえ」を全編読み、自分なりの見解をもってみてください。
にごりえは1895年の作品ですが、文章は簡易で非常に読みやすいので中学生にもおすすめです。
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