今回は『人間失格/太宰治』のあらすじと要約です。
『人間失格/太宰治』は誰もが一度は耳にしたことがあるほどの有名作ですね。
主人公は作者である太宰治自身で、昭和11年ころまでの実生活をもとに脚色された作品です。
太宰治は「人間失格」の他にも、「富嶽百景(ふがくひゃっけい)」や「走れメロス」などの有名作もあります。
この「人間失格」という作品は太宰治の晩年の作品で、この作品が連載された年に彼は入水自殺しています。
今回は太宰治の『人間失格/太宰治のあらすじと要約』として、ぜひ彼の価値観や人生のいったんに触れてみてください。
※ お時間のない方向けに ”最初に「あらすじ・要約のまとめ」を載せている” ので、そちらだけでもお読みください<(_ _)>
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人間失格/太宰治【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】
「人間失格/太宰治ーあらすじ・要約・読書感想文・解説」まとめ
・ 葉蔵(ようぞう:主人公)は裕福な家に育つが、常に不安と恐怖に襲われていた
・ そこで考えついたのが「道化」であり、葉蔵の最後の求愛行動であった
・ しかし、中学に入り竹一に道化を見破られてしまう
・ 葉蔵は再び不安と恐怖に襲われるが、竹一をてなづける
・ 高校に入り自分は初めて女性に恋をし、彼女と入水自殺をはかる
・ しかし、死んだのは女性だけで葉蔵だけは助かってしまう
・ その後、別の女性と結婚するが彼女が強姦されているのを目撃する
・ 葉蔵は再び自殺を図るが、またも失敗し結局 脳病院に送られることになる
・ もはや自分は狂人となった…完全に人間ではない…、人間、失格
・ 自分は今年で27歳になるが、白髪のために40歳以上に見えるらしい
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『人間失格/太宰治』の簡単・分かりやすい要約
『人間失格/太宰治』の主な登場人物は2人です。
1、ある男の日記をみつけた「私」
2、物語の中心である人間失格の「自分(葉蔵:主人公)」
ここからは『人間失格/太宰治の簡単・分かりやすい要約』として概要だけ説明していきます。
私はある男(葉蔵)の手記(自分の経験や体験などを書いた日記)を見つけます。
私はその男の写真を3枚見たことがあります。
醜く笑っている写真、非常に美しい写真、何の表情もない顔が映っている写真…これはその男の手記です。
<男の手記>
自分は裕福な家で育ちましたが、いつも不安と恐怖心を感じていました。
その不安や恐怖から逃れるために考えついたのが「道化(わざとおかしな行動をして周囲を笑わせたりすること)」です。
道化は自分にとって、人間への最後の求愛行動でした。
しかし、中学に入り「竹一」という冴えないクラスメイトから自分のわざとやっている道化を見破られます。
自分はまた強い不安と恐怖に襲われるようになります。
それらを払拭(ふっしょく)するため、自分は竹一をてなづけました。
高校に入学し、自分は初めて「ツネ子」という女性に恋をします。
ツネ子も自分と同じく人生に疲れているようで、彼女と心中するため自分たちは鎌倉の海へ飛び込みました。
しかし、死んだのはツネ子だけで自分は助かりました。
心中事件がきっかけとなり、自分は公庫を退学します。
その後、別の女性と暮らしますが、彼女らを不幸にすると思い結局逃げ出してしまいました。
逃げ込んだバアで出会ったのは「ヨシ子」という煙草屋の17,8の処女でした。
しばらくしてヨシ子と結婚しますが、ある時ヨシ子が商人に強姦されているのを目撃します。
自分は、ただその場に立ち尽くすだけで、ヨシ子を助けることはできませんでした。
その年の暮れ、自分は睡眠薬で自殺を図ります。
しかし、この自殺も失敗に終わり、最後には脳病院へと入院させられます。
もはや自分は完全に人間ではなくなりました。
人間、失格。
自分は今年で27歳になりますが、白髪のために周りからは40以上に見られます。
以上が簡単な『人間失格/太宰治』の要約です。
もう少し章をわけて説明した方がわかりやすいと思うので、以下に『人間失格/太宰治のあらすじ』も載せておきます。
『人間失格/太宰治』のあらすじ・解説・読書感想文
ここからは「人間失格/太宰治のあらすじ・解説・読書感想文」です。
「人間失格/太宰治のあらすじ1」ー 私がみつけた”ある男”の手記
主人公の小説家である「私」はある手記(自分の経験や体験などを書いた日記)を見つけます。
私はその男の写真を3枚だけ見たことがありました。
1枚目は10歳前後の男の写真。
男は大勢の女性に囲まれ、首を左に傾けながら醜く笑っていました。
2枚目は高校か大学生のころの写真。
恐ろしく美しい学生の姿でした。
3枚目はひどく汚い部屋での写真。
男は部屋の片隅で火鉢に両手をかざし、彼の顔にはどんな表情も印象もありません。
これから述べるのは、その男の手記です。
「人間失格/太宰治のあらすじ2」ー 第一の手記:唯一の求愛行動は”道化”
自分は空腹というものを知りません。
子供の頃に一番苦痛だった時間は、自分の家の食事の時間でした。
なぜ1日に3度もご飯を食べるのだろうと考えたこともあります。
自分は裕福な家に育ち、周りからは幸せ者だと言われてきましたが、いつも不安と恐怖に襲われていました。
その不安と恐怖から逃れるために思いついたのが「道化(わざとおかしな行動をして周囲を笑わせたりすること)」です。
道化は自分の最後の求愛行動で、自分がおかしなことをして家族を笑わせたりしていました。
しかし、自分の本性はお茶目とはかけ離れたものでした。
「人間失格/太宰治のあらすじ3」ー 第二の手記:初めて愛した女性との自殺
自分は中学に入っても”道化”を続けていましたが、ある時「竹一」に道化を見破られてしまいます。
竹一はクラスで最も貧弱で勉強もできない人間でした。
そんな竹一に道化を見破られ、自分は毎日、不安と恐怖に襲われます。
それからは竹一をてなづけるため、しばしば彼の家に通いなんとか自分は平常心を保ちました。
自分は高校に入り、友人から酒とたばこ、売春婦と左翼思想を教わりました。
その頃は自分を好きでいてくれる女性が3人いて、その1人が銀座で女給(接待役)として働く「ツネ子」でした。
ツネ子は自分と同じように金がなく貧乏くさい女でしたが、それゆえに親近感がわき、
自分に生まれて初めての恋心が芽生えました。
ある日、ツネ子が「死」という言葉を口走ります。
ツネ子も人間としての営みに疲れ切っているようで、自分も世の中への恐怖やわずらわしさを感じていました。
私はツネ子の提案に気軽に同意し、その夜、鎌倉の海に飛び込みました。
そして、ツネ子は死に、自分だけが助かったのです。
「人間失格/太宰治のあらすじ4」ー 第三の手記:飲酒とモルヒネ、病院送り…人間失格
鎌倉でのツネ子との心中未遂により、自分は高校を退学させられます。
その後、別の女性(シヅ子)とその娘(シゲ子)と暮らし始めますが、飲酒の量が次第に増えていき、
このままでは自分は彼女らをめちゃくちゃにすると思い、そこから逃げ出しました。
逃げ込んだバアで17、8歳の処女であった「ヨシ子」と出会いました。
ヨシ子は自分に酒をやめるよう忠告し、自分は「酒をやめたら僕のお嫁になってくれるかい?」といい、ついには彼女と結婚しました。
そして、ある事件が起こります。
忘れもしない蒸し暑い夏の夜のこと。
うちによく出入りしていた商人がツネ子を犯している光景を自分は見ました。
自分はヨシ子を助けることも忘れ、ただただ、その場に立ち尽くしていました。
その後、自分は睡眠薬を飲んで自殺を図りました。
しかし、またしても死ぬことはできませんでした。
今度は酒の代わりにモルヒネに手を出すようになりました。
そして今度こそ死のうとした時、引き取り人であった「ヒラメ」が現れ、脳病院に連れていかれました。
今はもう自分は罪人などではなく、狂人でした。
人間、失格。
もはや自分は、完全に人間ではなくなりました。
自分は今年で27歳になりますが、めっきり増えた白髪のために、周りからは40歳以上に見られます。
以上、「人間失格/太宰治のあらすじ・解説・読書感想文」についてまとめました。
「私」が見つけた手記につづられた「自分」こそが「人間失格」の主人公である葉蔵に当たります。
「葉蔵」は世の中に常に”恐怖”と”不安”を感じていて、何度も自殺を図りますが結局は死ぬことができません。
そればかりか愛した女性だけが死に、結婚した女性は強姦され、酒とクスリにおぼれていきます…。
なかなか現代人にとっては「心中」や「クスリ漬け」というのは現実味のわかない内容かもしれませんが、
太宰治自身の人生とある程度リンクされた物語だと考えると読みやすいかもしれません。
太宰治も、
・ 女性との心中未遂(女性だけ死亡)
・ 内縁の妻の浮気
・ 薬物中毒&入院
のすべてを経験していて、そのときの感情をもとに「人間失格」は構成されたと考えられます。
葉蔵の日記には、第1~3までの3つに分けられていて、
第1の手記 ⇒ 幼少期(小学生)
第2の手記 ⇒ 青年期(高校生)
第3の手記 ⇒ ~廃人
となっていて、それぞれが ”「私」が最初にみた写真” に対応しています。
葉蔵は、薄気味悪い道化師として表現されているため特異な存在に感じるかもしれませんが、
現在の我々においても、相手に好かれるため振る舞い(=道化)は日常的に行っているはずです。
嫌いな相手に笑顔を向けたり、気を使って嫌な仕事を引き受けたり…など、誰もが ”道化師” であるはずなのに、
「人間失格」の葉蔵はメンタルがあまりに弱かったために薬物におぼれ ”廃人” となっています。
つまり、自分が道化であることを自覚し、それに苦悩し続けたからこそ葉蔵は ”廃人” となったわけです。
一方で、無頓着な私たちは ”正常” とされる人間であるわけです。
一体、自我に苦悩した葉蔵と、自己を見失いつつある現代人のどちらが本当の ”廃人” なのでしょうね。
あまり自分の意見を述べると作品を読んだ時の印象を変えてしまうかもしれないので、お時間のある方はぜひ一読してみてください。
個人的には「近現代文学」として最も好きな作品であり、また最も「読後の感想」が学生時代と異なる作品でもあります。
『人間失格/太宰治』に関してだけは、保存用として一家に一冊おいておくことをお勧めします。
当時読んだまったく同じ本を読み返して、あの頃を思い出しながら読み返す…というのがお勧めの読書の楽しみ方です。。。
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