今回は『雪国/川端康成のあらすじと要約』です。
私は今まで有名な近代文学はすべて目を通してきたつもりですが、
「雪国」ほど美しい風景描写と、微妙に揺れ動く心理の哀感を表現した作品は他に思い当たりません。
私が初めて「雪国」に触れたのは中学生の頃でしたが、
単語の意味がわからないものが多かったにもかかわらず、ヒロインの「駒子」に強く惹かれていたことをよく覚えています。
今回は『雪国/川端康成【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】』として、
現代の中学生にも理解してもらえるように ”短く・わかりやすく” 書いていくので、ぜひ純白で精錬された川端康成の最高傑作をお楽しみください!
※ 時間のない方向けに、最初に「まとめ」を載せています
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雪国/川端康成【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】
「雪国/川端康成ーあらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説」まとめ
・ 国境の長いトンネルを抜けると雪国だった
・ 「島村(主人公)」は越後湯沢に向かう道中、「病人の男」を世話していた「葉子」に惹かれた
・ 駅に着くと、半年前に出会った「駒子」が出迎えてくれた
・ 島村と駒子は半年前に出会っていて、駒子は不思議なくらい清潔な女だった
・ 島村には妻子がいたが、駒子に惹かれ、彼女に会うために雪国にやってきていた
・ 島村が駒子の自宅を訪れると、そこには汽車であった葉子と病人の男がいた
・ 聞いた話では、駒子は病人の婚約者で、彼のために身を売ってお金を稼いでいたらしい
・ しかし、病人の男には葉子という新しい恋人がいるように思えた
・ そんな無駄なことをしている駒子を島村は純粋な存在だと再認識した
・ 3度目の雪国訪問のとき、島村は病人の男がなくなったことを知る
・ そして葉子は駒子が憎いと話し、島村は葉子に狂気を感じた
・ 島村は駒子に惹かれる自分に気付きつつも、駒子を一途に愛することはできなかった
・ そして、今度帰京したら、もう二度とここを訪れることはないという気がしていた
・ そんな時、村の小屋が火事になり、小屋の2階から女の体が落ちてきた
・ その女は葉子で、痙攣して動かなくなった葉子を駒子は抱きかかえた
・ その姿は、自分の犠牲か刑罰かを抱いているように見えた
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『雪国/川端康成』の簡単・分かりやすい要約
『雪国/川端康成』の主な登場人物は4人です。
1、島村:主人公。親の財産で気ままな暮らしをしており、東京に妻子がいる
2、駒子:芸者。島村に好意をもっており、島村も彼女に会うために雪国を3度訪れている
3、葉子:汽車の中で見かけた女性。連れの病人を甲斐甲斐しく世話していた姿に島村は惹かれる
4、病人の男(師匠の息子):駒子が頼っていた師匠の息子で、駒子はこの男のために病院代を稼いでいた
ここからは『雪国/川端康成の簡単・分かりやすい要約』として、概要だけ説明していきます。
国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国でした。
「島村(主人公)」は越後湯沢に向っていて、
車内では「葉子」という若い娘が「病人の男」を甲斐甲斐しく世話していました。
島村は葉子の一途な姿に、次第に惹かれていきました。
島村が降りる駅に着くと、半年前に出会った「駒子」が出迎えてくれました。
駒子は不思議なくらい清潔な女で、
島村には妻子がいましたが、駒子の純粋さに惹かれ、駒子に会うために雪国にやってきていました。
島村は駒子に友情のようなものを感じていましたが、駒子は島村に惚れているらしく、
最初は友達でいようと努めたものの、最後には島村に身をゆだねるのでした。
島村は一度東京へと戻りますが、駒子に会うために再び雪国を訪れます。
島村はこの間、駒子にいっさい連絡をしていませんでしたが、
駒子は島村を責めることもせず、たいそう懐かしみ、全身でよろこびを表現してくれました。
ある日、島村が駒子の自宅を訪れると、そこには汽車であった葉子と病人の男がいました。
どうやら一緒に暮らしているようで、島村は村の人から、
駒子は病人の婚約者で、彼のために身を売ってお金を稼いでいたことを聞かされます。
しかし、病人の男には葉子という新しい恋人がいるように思えたため、
島村は駒子が無駄なことをしていると感じながらも、同時にやはり純粋な存在なのだと再認識します。
ただ、島村は駒子を一途に愛することはできず、再び帰京の日を迎えます。
そんな時、島村を駅まで見送りに来ていた駒子のもとに、 葉子が走ってきて、
”師匠の息子(病人の男)がもう危ないから、早く帰ってきて”
と駒子に言います。
しかし駒子は全く動こうとせず、一人島村が行く汽車を見送るだけでした。
秋になって、島村は再び雪国を訪れます。
そして駒子から、病人の男がなくなったことを知らされます。
ある日、島村が葉子に ”駒子と病人の男が婚約者だったのか” と聞くと、
葉子は鬼気迫る様子で激しく否定し、駒子が憎いと話しました。
島村は葉子に狂気を感じ、このまま狂うのではないかと心配しました。
そのうち、島村は駒子に惹かれる自分に気付きつつも、駒子を一途に愛することはできず、
今度東京に帰ったら、もう二度とここを訪れることはないという気がしていました。
そんな時、村の小屋が火事になりました。
ちょうど駒子と出会った島村は、二人で火事場へ急行すると、2階から女の体が落ちてきました。
その女は、葉子でした。
痙攣して動かなくなった葉子を抱きかかえた駒子の姿は、
自分の犠牲か刑罰かを抱いているように見えました。
以上が簡単な『雪国/川端康成』の要約です。
もう少し章をわけて説明した方がわかりやすいと思うので、以下に『雪国/川端康成』のあらすじも載せておきます。
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『雪国/川端康成』のあらすじ・解説
ここからは「雪国/川端康成」のあらすじと解説です。
葉子に惹かれる島村と、出迎える駒子
国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国でした。
「島村(主人公)」は越後湯沢に向かう車内から眺め、村の冷え冷えした様子に雪国を実感しました。
島村が降りる駅で、「葉子」という若い娘と「病人と思われる男」も同時に降りました。
葉子は汽車の中で、その病人の面倒を甲斐甲斐しくみており、
島村は車内で葉子にどんどん惹かれていっていました。
そんな葉子を駅まで迎えに来たのが「駒子」という、島村を雪国へ誘った女でした。
島村と駒子の出会い
島村が駒子と初めて出会ったのは、もう半年前のことでした。
当時から島村は親の財産で気ままに暮らしており、自然と触れ合うために山に入っては温泉宿などに泊まることがありました。
ある夜、芸者を宿に呼ぼうとすると、ほかの宴会で芸者が出払っているそうでした。
しかし、素人であれば呼べるということで現れたのが、駒子でした。
駒子は不思議なくらい清潔な女で、まだ19歳だといいます。
駒子は雪国の生まれで、日本舞踊の支障として身を立てるつもりだったけれども、
頼りの旦那に1年半ほどで先立たれたしまったと素直に身の上話を話してくれました。
島村には妻子がいましたが、駒子と会うたびに親密になっていき、
駒子に友情のようなものを感じるようになっていました。
そうして半年後、島村は駒子を訪ねて雪国にやってきたのです。
島村と駒子の関係性;1度目の雪国訪問
島村が宿に落ち着いた翌日、駒子は島村の部屋に遊びに来ました。
島村は駒子と友人として付き合いたいと考えていたため、
駒子に芸を頼むのではなく、ほかの芸者を呼んでくれるようお願いしました。
しかし、駒子は ”自分にお願いするのはおかしい” と言って断りました。
そのため、島村は宿に頼んで芸者を呼んでもらいましたが、
その芸者は駒子のように清潔できれいな女ではなく、駒子の清らかさを再認識するのでした。
その後、駒子は再び島村のもとを訪れ、最初は友達でいようと努めたものの、
最後には島村に身をゆだねるのでした。
翌日、島村は妻子のいる東京へと帰っていきました。
島村は駒子に惹かれてはいるが…;2度目の雪国訪問
1度目の雪国訪問から199日後、島村は再び駒子に会うために雪国にやってきました。
島村はこの間、駒子にいっさい連絡をしていませんでしたが、
駒子は島村を責めることもせず、全身でよろこびを表現してくれました。
ある日、駒子は島村を自宅へ呼びます。
駒子の家は古いながらも清潔感が感じられました。
そして、この時初めて、島村は駒子が汽車であった葉子と病人の男と一緒に暮らしていたことを知ります。
駒子は、病人の男は師匠の息子でもう命が長くはないことを島村に話しますが、
葉子についてはいっさい話そうとしませんでした。
その後、島村は宿屋で呼んだマッサージ師から駒子の身の上話を偶然聞くことができました。
・ 駒子はその病人の婚約者だということ
・ 彼のために、芸者になってお金を稼いでいたこと
島村が駒子に聞いた話を伝えても、駒子は嘘だと否定しました。
しかし島村は、病人の男には葉子という新しい恋人がいるにもかかわらず、駒子は身を売ってまで貢いでいたと考え、
駒子がたいそう無駄なことをしていると感じながらも、同時にやはり純粋で清らかな存在だと感じるのでした。
それから駒子は毎日のように島村の部屋に泊まるようになりました。
しかし、島村が東京に帰る日が近づくにつれ、心細さと虚しさから、
島村に ”つらいから早く帰れ” などと言いました。
島村は駒子の純粋さに惹かれながらも、真剣に付き合おうとは考えられませんでした。
そして島村が東京へ帰る日、駅まで見送りに来ていた駒子のもとに、
葉子が真剣な様子で走ってきました。
葉子は ”師匠の息子(病人の男)がもう危ないから、早く帰ってきて” と駒子にお願いします。
しかし駒子は ”人が死ぬのはみたくない” といって全く動こうとしません。
島村も駒子にはやく帰るように諭しますが、それでも駒子は譲らず、
島村が行く汽車を一人で見送っていました。
3度目の雪国訪問
秋になって、島村は再び雪国を訪れます。
宿に着くと駒子がいて、激しく体を投げつけてきました。
駒子の話で、島村は病人の男がなくなったこと、葉子が毎日墓参りをしていることを知ります。
島村が駒子を誘って墓参りに行ったとき、島村は葉子と二人だけでじっくり話す機会をもつことができました。
島村が ”駒子と病人の男が婚約者だったのか” と葉子に聞くと、
葉子は鬼気迫る様子で激しく否定し、駒子が憎いと話しました。
島村は今まで興味を持っていた葉子に狂気を感じ、このまま狂ってしまうのではないかと心配になりました。
3度目の雪国訪問は長引きました。
そのうち、島村は駒子が自分のもとに来てくれることを待ち望むようになると同時に、
妻子を裏切り、駒子を一途に愛することはできず、駒子とともに自分自身も哀れに感じるようになっていきました。
そして、いつまでもわがままは続けていられないと感じ、
今度東京に帰ったら、もう二度とここを訪れることはないだろうという気がしていました。
そんな時、村の小屋が火事になりました。
ちょうど駒子と出会った島村は、二人で火事場へ急行すると、
2階から女の体が落ちてきました。
その女は、葉子でした。
かすかに痙攣して動かなくなった葉子を抱きかかえた駒子の姿は、
自分の犠牲か刑罰かを抱いているように見えました。
以上が「雪国/川端康成」のあらすじです。
最後が少しわかりにくくなってしまったかもしれませんが、
2階から落ちた葉子は死んだわけではありません。
ただ、病人の男をなくしたことで、”葉子の気は狂っていた” ように表現されているため、
少なくとも ”まともな精神” はすでに持っていなかったと考えられます。
実際に、作者の川端康成自体も、
・ 島村が雪国を訪れることはもうない
・ 駒子は葉子を背負ったまま生きていく
と語っています。
よく「雪国」を表現する用語として「叙情的(感情を述べ表すこと)」という言葉が用いられますが、
実際には「葉子」がなぜ気が狂うほど駒子を憎んでいたのかははっきりと書かれていません。
しかし、島村が駒子の家を訪れた際に、”葉子が島村をにらみつけた” と表現されていることから、
葉子は病人の男を一途に愛していて、いい加減で体裁ばかりの駒子に嫌悪感を感じ、
さらに駒子と病人が婚約者だったという関係性に激しく嫉妬していたと考えられます。
ただ実際には、(文中から読み解く限り)駒子と病人の間に恋愛感情はなく、
駒子と病人は成り行き上、一緒に暮らしているという関係性だったと推測されます。
本作を読んで強く感じるのは、「繊細で美しい心理描写・風景描写」が徹底されているという点で、
読んでいるだけで綺麗な雪原と、駒子の純情さが容易にイメージできます。
例えば、
「雪国の女性たちは、雪の中で糸を作り、雪の中で織り、雪の水で洗い、雪の上でさらす」や
小説の始まりである「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」など、
短い文章で ”色” を連想させ、白い世界につつまれた清らかな女性を想起させやすくしています。
また、駒子の発言も幼い印象を受け、子供らしさという具象さから純情・純粋がイメージされます。
実は今回の「雪国のあらすじ・要約」を書いているとき、
最初は会話文を多めに取り入れ、本来作品が備えている叙情的表現を再現しようとしたのですが、
いかにも付け焼刃の貼り付けになってしまったので、思い切って割愛することにしました(笑)
「雪国」という作品がもつ微妙な心理の揺らぎや、美しい世界観は実際に読んでみる価値が非常に高いと思うので、
ぜひ原作を一度お読みになってください。
ブックオフなどでは中古を100円で買えると思いますが、
数十年後に読み返すためにも、「雪国」に関しては新品で購入し、末永く保管しておくことを強くおススメします!
新品でも500円しないはずなので、後悔しない買い物になることは保証します!
ただ、中学生くらいだと、けっこう単語の意味が分からなかったり、文章が小難しく感じるかもしれませんのでご注意を…。
以上、『雪国/川端康成【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】』でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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