今回は『鼻/芥川龍之介』のあらすじと要約です。
以前「羅生門」という芥川龍之介のちょっと不気味な作品を紹介しましたが、
今回の「鼻」は羅生門と対照的でユーモラスな筆致で描きあげられています。
「人の不幸は蜜の味」ということわざで「鼻」を表現する方はいますが、
個人的には全く見解が異なっていて、「人の幸せは胆の味」という感じでしょうか(臥薪嘗胆(がしんしょうたん)由来で)。
他人の不幸には同情するけれど、他人の幸せは素直に喜べない…そんな利己主義・エゴイズムを具象化しているように感じます。
この点では実は「羅生門」と大筋のテーマは合致していますね。
さて、前置きばかり長くなっても仕方がないのでさっそく『鼻/芥川龍之介のあらすじ・簡単な要約』を紹介していきます。
※ お時間のない方向けに ”最初に「あらすじ・要約のまとめ」を載せている” ので、そちらだけでもお読みください<(_ _)>
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鼻/芥川龍之介【あらすじ・簡単な要約・読書感想文・解説】
「鼻/芥川龍之介ーあらすじ・簡単な要約・読書感想文用・解説」まとめ
・ 内供は長い鼻をひどく気にしている
・ 周りからは笑われ内供の自尊心は傷ついていた
・ 鼻を小さくする方法をいろいろと試したが効果はなかった
・ ある日、弟子に聞いた方法により内供の鼻は小さくなった
・ しかし、鼻は小さくなったのに周りからはより一層笑われるようになった
・ 内供はこのとき、人の利己主義をなんとなく感じ取り日ごとに機嫌が悪くなっていった
・ するとある朝、内供の鼻は元通りのながっ鼻に戻っていた
・ 内供は「これでもう他人に笑われない」と安心した
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『鼻/芥川龍之介』の簡単・分かりやすい要約
『鼻/芥川龍之介』の主な登場人物は、主人公で長い鼻を気にしている「禅智内供(ぜんちないぐ)」の1人だけです。
あとは弟子がちょっと出てきたり、周りの人が嘲笑役として出現する程度です。
では、ここからは『鼻/芥川龍之介の簡単・分かりやすい要約』として概要だけ説明していきます。
禅智内供は15cm以上もある長い鼻をひどく気にしていました。
長い鼻は不便なだけでなく、この長い鼻によって他人から笑われ自尊心が傷つけられていました。
しかし、内供は僧侶の身ということもあり、内心では長い鼻を気にしているものの、
周りにはそれと知られぬよう隠していました。
そんなある日、弟子の一人が鼻を小さくする方法を教わってきます。
実際にその鼻を小さくする方法を試すと、本当に内供の鼻は小さくなりました。
「これでもう笑われることはない」と内供は安心しますが、
逆に鼻が短くなったことでより周囲からあざ笑われるようになります。
内供はこのとき「人は他人の不幸には同情するが、幸せには決して共感しないのだ」と気づきます。
内供は日ごとに機嫌が悪くなっていき、弟子に八つ当たりをし鼻を小さくしたことを恨みさえします。
しかしある朝、一夜にして内供の鼻は元通りの長い鼻に戻っていました。
内供は内心「今度こそもう笑われない」とはればれした気持ちになりました。
以上が簡単な『鼻/芥川龍之介』の要約です。
もう少し章をわけて説明した方がわかりやすいと思うので、以下に『鼻/芥川龍之介のあらすじ』も載せておきます。
『鼻/芥川龍之介』のあらすじ・解説
「鼻/芥川龍之介のあらすじ1」ー 長い鼻を気にする僧侶
禅智内供(ぜんちないぐ)の鼻は近隣では知らない人がいないくらい長い鼻でした。
長さは15cm以上もあって、あごの下までぶら下がっていたため、
食事の時には鼻がお椀に入らないように弟子が内供の花を持ち上げるほどでした。
内供は僧侶の身であったため、鼻が長いという外見のことをあまり気にしてはいけないと考え、
周りの人にはあまり鼻のことを気にしていないふりをしていました。
しかし実際には鼻の異様な長さにひどく自尊心を傷つけられていました。
内供は他人にはバレないように鼻が少しでも小さく見えるように熱心に工夫し、
また自分と同じような鼻の長い人間がいないかと探し回りました。
しかし、いろいろと試しても効果はなく、同じような鼻の人を見つけることもできませんでした。
「鼻/芥川龍之介のあらすじ2」ー 鼻を小さくできた!…しかし
そんなある年の秋、内供の弟子が知り合いの医者から鼻を小さくする秘法を聞き出してきました。
その方法とは、熱湯で鼻をゆでてから人に踏ませるという方法でした。
そして実際にこの方法を試したところ、本当に内供の鼻は小さくなったのです。
しばらくしても鼻が元に戻る様子はなく、内供はこれで鼻のことで他人に笑われなくなると安堵しました。
しかし意外なことに、周りの人々が内供の鼻をみると、以前にも増して内供の鼻をあざ笑うようになってしまいました。
「鼻/芥川龍之介のあらすじ3」ー 人の幸せは喜べない?
人は他人の不幸には同情を示しますがが、その人が不幸を乗り越えてしまうと物足りなく感じるようです。
そしてその人をもう一度不幸におとしいれてみたくさえなります。
内供はこうした不幸の当事者ではない人がもつ「利己主義(エゴイズム)」をなんとなく感じとり、
日ごとに機嫌が悪くなっていきました。
ついには弟子を意地悪く叱るようになり、鼻が小さくなったことを逆に恨むようにさえなっていました。
ところがある朝、一夜にして内供の鼻は元通りの長い鼻に戻っていました。
内供は「今度こそ誰も笑うものはいないだろう」と晴れやかな気持ちになりました。
以上が『鼻/芥川龍之介』のあらすじと要約です。
鼻の長さをずっと気にしていた内供でしたが、実際に鼻が小さくなると、なぜかもっと他人から笑われてしまう…。
そんな経験から内供は「人の利己主義」に気づきますが、同時に内供自身も自己そのものを見失っていたと考えられます。
この「鼻」という作品は「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」から題材をとっているため、
メインテーマは「利己主義」であっても、どこかに「自己の認識」というテーゼが介在しているでしょう。
こういった滑稽で読みやすい作品を通して”人間の身勝手さと弱さ”を表現するのは芥川龍之介ならではかもしれません。
実は夏目漱石も「鼻」を絶賛していて、
芥川龍之介に宛てた手紙には「鼻のような作品を書き続けていれば類なき作家になれる」と太鼓判を押しています。
芥川龍之介の才知を見抜く夏目漱石もまたアッパレですね。
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