そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティー|ネタバレ・あらすじ・感想を10分で!

更新日:

 

今回は「そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティー」の【ネタバレ・あらすじ・感想・解説】です。

And Then There Were None-Synopsis

 

読みやすいように、最初に

 ストーリーの流れ

 登場人物

を載せておきました。

 

世界一のミステリ小説” と呼ばれる『そして誰もいなくなった』をどうぞお楽しみください!

※ 犯人(トリック)は【一番最後に載せてあります

※ 最初から読めば【物語を楽しめる構成になっています

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そして誰もいなくなった|ネタバレ・あらすじ・感想/アガサ・クリスティー

 

そして誰もいなくなった|【ストーリーの流れ】と【登場人物】

 

「そして誰もいなくなった」の大まかな【ストーリーの流れ】

 職業・年齢がバラバラな「10人」が島に集められる

⇒ 1人1人について、過去に犯した殺人が暴かれる

⇒ 童話の通りに、1人ずつ殺されていく

⇒ 最後には全員が殺害された状況で見つかる

⇒ 確かに犯人は「10人」の中にいるが、どう考えても全員が殺されているようにみえる

⇒ いったい誰がどうやって殺した…?

というものです。

 

 

主な 【登場人物】は10人です。

※ ()内は本文中で暴かれるそれぞれの殺人容疑;どれも法律では裁くことができない

※ 死亡した(消えた)順

1、マーストン:青年(交通事故 ⇒ 2人を殺害)/元気で生命力◎

2、エセル:執事の妻雇い主に薬を与えない ⇒ 殺害)/おどおどしている

3、マッカーサー:元将軍(妻の愛人を誘導 ⇒ 殺害)/諦めがいい

4、ロジャーズ:執事(妻エセルと同じ)/礼儀正しい

5、ブレント:婦人(お手伝いを非難 ⇒ 自殺へ)/キリスト教徒

6、ウォーグレイヴ:元裁判官(陪審員を誘導 ⇒ 死刑)/頭がいい

7、アームストロング:医者(飲酒後に手術 ⇒ 殺害)/お人よし

8、ブロア:元刑事(証拠を捏造 ⇒ 死亡)/自己中だが腕力◎

9、ロンバード:元軍人(食料を持ち逃げ ⇒ 殺害)/腕力◎行動力◎で銃を所持

10、クレイソーン:元女教師(教え子を誘導 ⇒ 溺死)/したたか

 

それでは、さっそく『そして誰もいなくなった』を読んでいきましょう!

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そして誰もいなくなった|ネタバレ・あらすじ・感想・解説

 

集められた10人

 

ある大金持ちが「兵隊島」という小島を買ったというニュースが広まった。

 

だれが購入したのかは分からないが、その島には大そう立派な豪邸が建てられたという噂だ。

 

そして島に、職業も年齢もバラバラな10人の男女が招待された

 

あるものはタダで夏休みを豪邸で過ごせると考え、あるものは仕事をやるという誘いに乗って…。

 

しかし、だれ一人「招待主」と面識のあるものはいなかった

 

一行がボートで島に着くと、すでに到着していた「ロジャーズ」と「エセル」の執事夫婦が出迎えてくれた。

 

「ロジャーズ(執事男)」の話によると、招待主は遅れているらしく明日まで島に来られないようだ。

 

 

暴かれる罪

 

それぞれが立派な寝室に案内された。

 

すべての部屋には「古い童話」の額がかけてあった。

 

1、小さな兵隊さんが十人、ご飯を食べたら喉をつまらせて、残りは九人

2、小さな兵隊さんが九人、夜ふかししたら寝坊して、残りは八人

3、小さな兵隊さんが八人、デヴォンに住むって言って、残りは七人

※ デヴォン ⇒ イギリスの地名

4、小さな兵隊さんが七人、まき割したら頭を割って、残りは六人

5、小さな兵隊さんが六人、蜂の巣をイタズラしたら蜂に刺されて、残りは五人

6、小さな兵隊さんが五人、法律を志して大法官府に入って、残りは四人

※ 大法官府 ⇒ 日本でいう法務省に近いもの

7、小さな兵隊さんが四人、海に出かけたらくん製のニシンにのまれて、残りは三人

※ くん製のニシン ⇒ ミスリード(間違った情報)を表す

8、小さな兵隊さんが三人、動物園を歩いたら大きな熊に襲われて、残りは二人

9、小さな兵隊さんが二人、ひなたに座ったら黒こげになって、残りは一人

10、小さな兵隊さんが一人、あとに残されたら、自分で首をくくって、そして、誰もいなくなった

 

夕食の時間となり、皆が和気あいあいと談笑した。

 

食事に満足し、コーヒーを飲んでいたとき、フッと静かになった。

 

そのとき、人の声とは思えない、冷たい音が響いたー

紳士ならびに淑女の皆さん!お静かに!

あなた方は次の罪状で告発されている。

 マーストン(元気な青年)、去年ジョンおよびルーシーを殺したのはあなただ

 ロジャーズならびにエセル(執事夫婦)、1929年ブレイディーを殺したのはあなたたちだ

 マッカーサー(元将軍)、1917年リッチモンドを殺したのはあなただ

 ブレント(婦人)、1931年テイラーを殺したのはあなただ

 ウォーグレイヴ(元裁判官)、1930年シートンを殺したのはあなただ

 アームストロング(医者)、1925年クリースを殺したのはあなただ

 ブロア(元刑事)、1928年ランドーを殺したのはあなただ

 ロンバード(元軍人)、1932年部族民21人を殺したのはあなただ

 クレイソーン(元女教師)、1935年シリルを殺したのはあなただ

被告人よ、あたたたちに申し開きができるか!

 

場が、ー凍り付いた。

 

 

第一の死者

 

エセル(執事妻)がその場に倒れこみ、ロジャーズ(執事)は妻のためにブランデーを用意した

 

ロンバード(元軍人)は音のした方へ飛び出した。

 

音はレコードプレイヤーから再生されたもので、ロジャーズ(執事)が内容を知らずに招待主の指示で再生していたものだった。

 

場が興奮し、ロンバード(元軍人)以外のものは皆、「罪状の告発」の内容を強く否定した

 

そして招待主について知っている情報を皆でかき集めたが、何も手がかりになることはなかった。

 

ただ自分たちの知られたくない過去をよく知っているということ以外は…。

 

皆が「翌朝、ボートが来たらすぐ帰ることにしよう」というなか、マーストン(元気な青年)だけは「犯人捜しをしよう」と言い出した。

 

そして、マーストン(元気な青年)がグラスを取って酒を一気に飲み干したとき、急にむせ始めた

 

顔を苦しそうにゆがめ、激しくもだえながら床に転がり落ちた。

 

彼は死んでいた

 

1、小さな兵隊さんが十人、ご飯を食べたら喉をつまらせて、残りは九人

 

 

自殺か殺しかー そして、第二の死者へ

 

アームストロング(医者)は、酒に即効性の猛毒が入っていると診断した。

 

自殺の可能性も考えられたが、元気で生命力にあふれたマーストンが自殺するとはとても思えなかった。

 

酒に毒を入れるチャンスは、だれにでもあった

 

時計が0時を過ぎ、皆は不審に思いながらもそれぞれ眠ることにした、…ドアにしっかりと鍵をかけて。

 

ロジャーズ(執事)だけは「あと片付けがある」といって、具合の悪いエセル(執事妻)を部屋に運んだままその場に残った。

 

ロジャーズ(執事)がダイニングにいくと、あることに気がついた。

 

テーブルに置いてあった「10個の陶器人形」が1つだけなくなっているということに。

 

ー翌朝、ロジャーズ(執事)はエセル(執事妻)が目を覚まさないことにも気がついた。

 

ロジャーズ(執事)の話では、妻は昨日倒れてから何も口にしていないという…ただアームストロング(医者)からもらった薬を除いては

 

皆が集まり、エセル(執事妻)の死について話し合った。

 

エセル(執事妻)は昨日の「罪状の告発」でひどくうろたえていた

 

「恐怖に耐えられなくなって、心臓麻痺を起こした」と考えることはできた。

 

しかし、昨日のマーストン(元気な青年)の死を考えると…、全員が猜疑心をもち始めていた。

 

そして、「10個の陶器人形」はまた1つ減り、8個になっていた

 

2、小さな兵隊さんが九人、夜ふかししたら寝坊して、残りは八人

 

 

第三の死者、そして初めて殺されたことが確実に

 

朝食を終え、それぞれが思い思いに行動した。

 

本来、来るはずのボートが来なかったため、アームストロング(医者)、ロンバード(元軍人)、ブロア(元刑事)の3人は

「自分たち以外の殺人者がこの島にいるのではないか」

と考え、島をくまなく探索した。

 

しかし、人が隠れられそうな場所は一切なく、マッカーサー(元将軍)に出会っただけだった。

 

マッカーサー(元将軍)は、ただぼーっと海を眺め「終わりを待っている」とつぶやいた。

 

彼は妻の名前を呼ぶさまは、頭がおかしくなってしまったようだった。

 

昼食の時間になったが、マッカーサー(元将軍)だけが現れなかった。

 

アームストロング(医者)がマッカーサー(元将軍)を呼びに行ったが…、すでに彼は息絶えていた。

 

頭を殴打されていた

 

3、小さな兵隊さんが八人、デヴォンに住むって言って、残りは七人

※ デヴォン ⇒ イギリスの地名

 

 

殺人考察

 

外では風が強くなっていたーどうやら嵐がくるようだ。

 

皆が集まり、マッカーサー(元将軍)の死について話し合った。

 

今回は明らかに人の手が加えられた殺人だった。

 

ウォーグレイヴ(元裁判官)が判事らしく場を仕切り、それぞれのアリバイを確かめていった。

 

アームストロング(医者)、ロンバード(元軍人)、ブロア(元刑事)の3人は行動を共にしていたが、それぞれ数分離れていた時間があり、犯行を否定するには至らなかった。

 

ほかのものについては、アリバイらしいものすらなかった。

 

つまり、第一~第三の殺人は「7人の誰にでも関与する余地があった」という結論に至った

 

嵐が近づき、島に7人以外の誰もいないとなると…生存者たちが殺人者から逃れるすべはなかった。

 

 

第四の殺人~第六の殺人

 

午後になり、嵐はいよいよ激しくなってきた…もう迎えの船がくることは期待できない

 

全員が疑心暗鬼になっていたが、どうすることもできずただ時間だけが流れていった。

 

いつまでも一緒にいる気にもなれずに、それぞれが寝室へと向かった…、ドアにしっかりと鍵をかけて。

 

しかし、翌日ロジャーズ(執事)の死体が発見された

 

頭は大きな斧で2つに割られていた。

 

4、小さな兵隊さんが七人、まき割したら頭を割って、残りは六人

 

続いて、ブレント(婦人)が「急に具合が悪くなった」といってイスに座り込んだ。

 

ほかの5人が少し目を離したすきに…、ブレント(婦人)は亡くなっていた

 

窓の方ではハチが飛んでいた。

 

5、小さな兵隊さんが六人、蜂の巣をイタズラしたら蜂に刺されて、残りは五人

 

2人の死について考察がおこなわれたが、やはり5人のだれにでも犯行は可能であった

 

ブレント(婦人)の死は、ハチに刺されたものではなく毒物を注射されたことによるものだった。

 

注射器はアームストロング(医者)が所持していたが、それが盗まれてしまったらしい。

 

加えて、ロンバード(元軍人)が所持していた銃も盗まれていた。

 

屋敷の中を探し回ったが、銃は見つからず5人の猜疑心を増長させるだけだった

 

クレイソーン(元女教師)はその場にいることに耐えられなくなり、一人自室へと戻っていった

 

しかし、部屋には海藻がぶら下げられており、教え子を溺死させた記憶がクレイソーン(元女教師)の脳裏によぎり、彼女は悲鳴を上げた。

 

男たちは驚き、彼女の部屋に駆け付け、介抱した。

 

ロンバード(元軍人)は彼女にブランデーをあげようと一度ダイニングにもどった。

 

クレイソーン(元女教師)がようやく落ち着き平静を取り戻したが、なぜかその場にウォーグレイヴ(元裁判官)だけがいなかった

 

4人が居間にもどると…、ウォーグレイヴ(元裁判官)は裁判官のかっこうをしてイスに座っていた

 

両脇にはロウソクの炎がゆらめいていた。

 

アームストロング(医者)の検視によって、彼が銃殺されたことがはっきりした

 

6、小さな兵隊さんが五人、法律を志して大法官府に入って、残りは四人

※ 大法官府 ⇒ 日本でいう法務省に近いもの

 

ウォーグレイヴ(元裁判官)の死については深く考察はなされなかった。

 

残りは4人しかおらず、だれが犯人なのか各々がすでに目星をつけていた

 

 

第七の殺人~第八の殺人、犯人はあいつしかいない…!?

 

夜、4人はそれぞれ自室へと引き換えしていった。

 

なぜかロンバード(元軍人)の部屋にはなくなったはずの銃がもどっていた

 

0時を過ぎ、静まり返った屋敷でブロア(元刑事)は廊下を歩くかすかな足音を耳にした

 

「誰かが怪しく動き回っている」

「リスクはあるが、これはチャンスだ…!」

 

ブロア(元刑事)は意を決し、静かに廊下に踏み出さした。

 

足跡が去っていった方を追うと…、玄関から人影が出ていくのがみえた

 

ブロア(元刑事)は玄関の方へ走っていこうとしたが思いとどまった。

 

「あぶない、これは自分をおびき出すためのワナかもしれないじゃないか!」

 

ブロア(元刑事)はきびすを返し、残る3人が部屋にいるか確かめることにした。

 

…結果、アームストロング(医者)だけが部屋にいなかった。

 

彼のカギは、確かに外側から施錠されていた。

 

ブロア(元刑事)とロンバード(元軍人)は屋敷を出ていったアームストロング(医者)の後を追うことにした

 

なぜか戻ってきた銃がロンバード(元軍人)を鼓舞していた。

 

2人は島と屋敷をくまなく探し回った。

 

…がしかし、アームストロング(医者)の姿はどこにもなかった

 

秘密の隠し部屋など作るスペースは屋敷に確実になく、島に隠れられる場所も存在しない!

 

ブロア(元刑事)が確かに見たというアームストロング(医者)の影は、キレイさっぱり消え去っていた。

 

7、小さな兵隊さんが四人、海に出かけたらくん製のニシンにのまれて、残りは三人

※ くん製のニシン ⇒ ミスリード(間違った情報)を表す

 

ブロア(元刑事)とロンバード(元軍人)は島に隠れる場所は存在しないというが、クレイソーン(元女教師)は信じなかった

 

「アームストロング(医者)の ”7番目の童話” では ”くん製のニシン” というミスリードを表す言葉が出てくる。」

「つまり、彼は ”いなくなったようにみせかけて実はすぐ側にいる” ということではないか…!」

 

一方で、ロンバード(元軍人)はブロア(元刑事)が犯人だと考えていた

 

「ブロア(元刑事)がアームストロング(医者)をみたというのが嘘かもしれない」

「実はすでにアームストロング(医者)を殺していたんじゃないか」

 

ーそれぞれが犯人におびえながらも、嵐は過ぎ去っていた

 

3人はとにかく助けを呼ぶため、崖に行き鏡でSOS信号を遠くの本土に向かって送ることにした。

 

昼時になり、ブロア(元刑事)は屋敷にもどって食事をとることを提案した。

 

しかし、クレイソーン(元女教師)はアームストロング(医者)がいるかもしれない屋敷には戻りたくなかった。

 

ロンバード(元軍人)も銃を所持していたため、ひらけた場所がいいと考え、結局ブロア(元刑事)は一人で屋敷に戻っていった

 

ーしばらくして、屋敷から悲鳴が聞こえた。

 

屋敷には、クマの時計で頭を割られたブロア(元刑事)の死体があった

 

8、小さな兵隊さんが三人、動物園を歩いたら大きな熊に襲われて、残りは二人

 

「やはりアームストロング(医者)が犯人だったんだ」

「彼は屋敷に隠れていて、戻ってきたブロア(元刑事)を殺したんだ!」

 

ロンバード(元軍人)とクレイソーン(元女教師)は、アームストロング(医者)が犯人であることを確信した

 

2人は屋敷を離れ、海が見張らせる岩沿いをゆっくり歩いた。

 

「嵐はおさまったし、明日には助けがくるだろう」

 

ロンバード(元軍人)が海を見下ろしているとー

 

ロンバード(元軍人)「あれはなんだろう。ほらあの岩のそば」

クレイソーン(元女教師)「なんだか洋服みたい。でも…服じゃないー人間よ!」

 

それはアームストロング(医者)の死体だった。

 

 

第九~第十の殺人、ー【そして、誰もいなくなった】

 

長い、長い時間が流れた。

 

2人はアームストロング(医者)の死体を見下ろして…、互いに相手の目を見た

 

ロンバード(元軍人)「つまり、そういうことだったのか」

クレイソーン(元女教師)「この島にはもうだれもいない…私たち2人だけしか」

ロンバード(元軍人)「そのとおり、これでわかった」

クレイソーン(元女教師)「ブロア(元刑事)はどうやって殺したの」

ロンバード(元軍人)「マジックを使ったな。大したものだ」

クレイソーン(元女教師)「アームストロング(医者)を引き上げてあげましょう。波の届かないところに」

ロンバード(元軍人)「同情しているのかい。わかった、手伝うよ」

 

2人はアームストロング(医者)の死体を引き上げた。

 

ーその時、クレイソーン(元女教師)がロンバード(元軍人)の腰にあった銃を奪い取った。

 

クレイソーン(元女教師)が握る銃は、しっかりとロンバード(元軍人)に狙いを定めた。

 

ロンバード(元軍人)「あのさぁ、ちょっと聞いてくれないかな。どうだろうー」

 

次の瞬間、ロンバード(元軍人)はクレイソーン(元女教師)に飛びかかった。

 

ヒョウのように目にもとまらぬ速さで…!

 

しかし彼女が引き金を引く方が一歩早く、ロンバード(元軍人)は地面に崩れ落ちた。

 

9、小さな兵隊さんが二人、ひなたに座ったら黒こげになって、残りは一人

 

クレイソーン(元女教師)は安心に満ちていた。

 

「これでもう島には私一人きり」

「私は生きている…!」

 

日が沈み、彼女は屋敷へ戻っていった。

 

「今日はゆっくり眠ろう。もう一人っきりなのだから」

 

彼女がダイニングルームに行くと、「10体あった陶器の人形」はまだ3つ残ったままだった。

 

「あんたたち、遅れているわよ」

 

彼女は2つを壊し、残った1つを手に持った。

 

「あなたはわたしと一緒にいらっしゃい」

「そういえば童謡の最後はなんだったかしら…?」

「そうそう、たしか結婚がどうとか…違ったっけ?」

 

彼女が部屋のドアを開けた。

 

そこには、ぞっとする仕掛けがあった。

 

天上のフックからロープがぶら下がっていた。

 

ロープにはきちんと輪っかが作られていて、下にはイスが用意されている。

 

「ああ、これで終わりなんだ」

 

彼女はイスにあがり、輪っかに首を通した。

 

そして、イスを蹴った。

 

10、小さな兵隊さんが一人、あとに残されたら、自分で首をくくって、そして、誰もいなくなった

 

 

警察による結論

 

後日、警察による調査が行われた。

 

有力な手がかりとなるのは、

 

ブレント(婦人)、ウォーグレイヴ(元裁判官)、ブロア(元刑事)、クレイソーン(元女教師)

が残していた「日記」と「メモ」である。

 

いずれも矛盾はなく、「6番目の死」までは殺された順番が分かる

1、マーストン(青年):毒殺

2、エセル(執事の妻):毒殺

3、マッカーサー(元将軍):撲殺

4、ロジャーズ(執事):斧

5、ブレント(婦人):毒殺

6、ウォーグレイヴ(元裁判官):銃殺

 

また、検視結果から残る4人についても死因はわかる。

アームストロング(医者):溺死

ブロア(元刑事):撲殺

ロンバード(元軍人):銃殺

クレイソーン(元女教師):首吊り

 

残った4人のうちの誰かが犯人として推理する。

 アームストロング(医者)の可能性

⇒ 水死後、引き揚げられた形跡あり。波で自然に打ち上げられた可能性はない。よって、アームストロング(医者)の死後生存者はいた。

 ブロア(元刑事)

⇒ 自らの頭を割って自殺することは困難。

 ロンバード(元軍人)

⇒ 銃殺されており不可能。

 クレイソーン(元女教師)

⇒ 首つり自殺している。しかし、そのとき蹴ったはずのイスがキレイに壁に並べられている。彼女の死後、イスを動かした生存者がいる。

 10人以外の可能性は?

⇒ 近くの村から島がみえる。村人によって島からの脱出者がいないことは明らかになっている。

 

警察の結論、

 10人は確かに殺されている

 島には10人しかいなかった

 

「だが、いったいそうなると、誰が10人を殺した犯人なのだ…?」

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ネタバレ【犯人&トリック】

※ ここから重大な【ネタバレ(犯人&トリック)】を含みます

 

 

私はこの告白を瓶に入れ、海へと投げることにした。

 

この告白が発見される確率は低いが、発見されたときには今まで未解決だった殺人事件が解決されるだろう。

 

私は小さい頃から、自分の中に矛盾する性格があることに気づいていた。

 

それは生き物が死ぬのをみたい、殺したいという願望と、それに相反する強い正義感である。

 

そんな私にとって、「裁判官」という職は私を満足させてくれた。

 

人を裁くことで自身の残虐性が満たされ、同時に強い正義感も充足するのだ。

 

しかし、私はこの数年、自分の中で大きな変化があるのを感じた。

 

人を、この手で殺したくなったのだ…!

 

私はどうしても人を殺さなくてはならない!

 

しかもそれはただの人殺しではなく芸術的なものでなくてはならない!

 

しかし同時に、強い正義感が殺人を邪魔した。

 

無実の人を殺してはならないと…。

 

そこで私は、法律では裁けなかった罪人を集め、罪が軽い順に殺していくことを決意した。

 

私はある童謡を思い出し、その通りに殺していくことを思いついた。

 

獲物探しはいたって簡単だった。

 

法律で裁けない犯罪は往々にしてあり、酒場や旅先でいろいろな話をきくことができた。

 

私はある小島を買い取り、自分を含めた10人をその島に招待した。

 

第一の殺人と第二の殺人は用意だった。

 

まだ誰も警戒していなかったため、

1、マーストン(青年):毒殺 ⇒ レコードが再生された騒ぎに乗じて、彼の空のグラスにこっそりと毒を入れる

2、エセル(執事の妻):毒殺 ⇒ 夫ロジャーズが妻のために用意して置いておいたグラスに毒を入れる

の2つは簡単だった。

 

第三の殺人には少々気を使った。

3、マッカーサー(元将軍):撲殺 ⇒ 人目を盗んで将軍に忍び寄り撲殺

 

第四の殺人と第五の殺人もチャンスがあった。

4、ロジャーズ(執事):斧 ⇒ 朝まき割をしているところに近づき斧で殺す

5、ブレント(婦人):毒殺 ⇒ コーヒーに睡眠薬をもっておき、睡魔に襲われたところを毒殺

 

この間、私はロンバード(元軍人)の銃を盗みこっそり隠しておいた。

 

銃の隠し場所は、大量にあった缶詰のビスケットの中である。

 

テープを貼り直しておけば気づかれないと考えたが、実際だれも缶詰のなかまで調べようとはしなかった

 

そして、第六の殺人がこの私自身、ウォーグレイヴ(元裁判官)である。

 

これには協力者が必要だった。

 

アームストロング(医者)は騙されやすい男で、

「犯人を出し抜くために、私が次の犠牲者のふりをしよう」

ともちかけると彼は大乗り気だった。

 

彼は、私のように地位も名誉もある人間が殺人をするなど微塵も考えていないようだった。

 

私の殺人偽装はうまくいった。

 

私の体は、両脇にセットしたロウソクがゆらめくおかげで見えづらく、また体を詳しく調べるのはアームストロング(医者)だけだ。

 

残りの生存者たちは見事に騙され、私は部屋に「死体」となって運ばれた。

 

この夜、私はアームストロング(医者)と合流し、彼を崖から突き落とした。

 

まったく「くん製のニシン」という童話さえ思い出していれば、私が犯人だと気付けたものを。

 

まさに彼をミスリードしていたのは犯人である私自身だったのだから。

 

アームストロング(医者)を殺した後、私は屋敷に戻りわざと音を立てながら廊下を歩いた。

 

もくろみ通り、男2人が私の後を追い、私はこっそりと屋敷に戻った。

 

私は死んだことになっているので、彼らがいくら探そうとも見つけられるのは「私の死体」だけである。

 

ついでに、彼ら3人の疑心暗鬼を強めるために、私は銃をロンバード(元軍人)のもとに返しておいた。

 

あとは翌日、

ブロア(元刑事):撲殺 ⇒ 屋敷に戻ってきたところを待ち伏せ、2階からクマの時計を落とす

ロンバード(元軍人):銃殺 ⇒ クレイソーン(元女教師)が殺した

クレイソーン(元女教師) ⇒ 自殺用の舞台を用意しておく

 

クレイソーン(元女教師)に関しては、どういう行動をとるか興味があったが、予想通り、彼女は人を銃殺したショックと過去の罪の意識から自殺を選んだ。

 

私は彼女が犯人だと警察に誤解されないよう、しっかりと蹴られたイスを壁際にキレイに片づけておいた。

 

ーそして、次は?

 

私はまもなくこの一文を書き終える。

 

あとは私が部屋に戻って、メガネについたゴムひもを銃にからませ、引き金を引くだけである。

 

ひもと銃はドアノブに通してあり、メガネは体の下においてある。

 

引き金を引いた反動で銃はドアまで引っ張られ、ゴムひもはメガネへともどっていくはずだ。

 

これで私は仲間の記録通り、銃殺された姿になる。

 

嵐が収まれば、本土からこの島に人がやってくるだろう。

 

その人たちは、10体の遺体と解けない謎を発見することになる。

 

 

以上、『そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティー【ネタバレ・あらすじ】を10分で!』でした。

最後までお読みいただきありがとうございました<(_ _)>

書きたいことはまだまだありますが、『そして誰もいなくなった』に関しては、読後に他人の感想を聞くのはもったいないと思ってしまいました。

「自分がどう感じ、どう考えたのか」を大切にしてほしいと勝手ながら考えてしまいます。

少なくとも私は『そして誰もいなくなった』は「最も好きな小説」であり、10年経って読み返しても全く色あせることがありませんでした。

しばらくしたら我慢できなくなって解説などを身勝手に追加していくと思うので、今しばらくは各自の所感を反芻していただきたく存じます<(_ _)>

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